a priori 1998-2004
わたしはこの建物とおなじ息をしている・・・
と気づいたところからはじまっています。
生まれ育った古い日本家屋の壁や床、柱、片隅にある暗がりのなかに
わたし以前の世代から日々繰りかえされてきた日常が、
溶け込んで染みつき、やがて家はいきもののように息をしはじめる。
その呼吸は、知らず知らずのうちに、皮膚を通してわたしの内側にも
入り込み、わたしの思考の底流のひとつとなって、流れているのです。
歳を経ることによって自分の身体にあらわれてきた、しみやしわを見て、
これはわたしにとってとても見慣れたもの、徐々に枯れていく花の花弁や、
歳月が刻みつけてゆく樹々の幹の表面やそのかたち、それにとてもよく似ていると気づき、
ひとの身体には、生物全般に共通する、経験に基づかない先天的なものが在るのではないかと
考えるようになりました。
ひとは、個々に負っている背景と、募ったり消えていったりを繰りかえし、
ときにはこころの奥深くまで沈殿してゆく感情とを持って、生きています。
そのうつろいやすい不安定で不完全な部分と、変わることのない生来的なもののふたつが
内在している様を、身体と植物の影をからみあわせることによって、表してみようと想うのです。
It was when I realized that this building breathes in the same way I do that I began.
In this old Japanese house where I was born and raised, in its walls, floors and pillars, in the darkness of its corners are immersed repeated over the ages before I existed, and before long, the house was breathing, just like a living thing. And then that breath crept into my mind through my skin, and became one with the flow of my thoughts.
I look at the spots and wrinkles that have appeared on my own body with age, now very familiar to me, like the petals of a flower or the surface or shape of a tree trunk changing with the passing of time, and I deduce a common element.
A person carries with him his own background, and with that emotions that accumulate, and then scatter, or settle at the bottom of his heart. By intertwining human and plant shapes, I want to express the movable and uncertain, as well as the unchangeable, aspects of all living things.